今日はこれから、2on1を実際に受けて頂いた管理者のお二人のお話をご紹介させていただきます。ご紹介を始める前に、背景を少しお伝えしたいと思います。
2021年秋~2022年夏にかけて、のべ32セッションを実施させていただいた、部長さんと課長さんのお話を伺いました。
部長の大林さんと課長の菊田さんのお話です。
彼女たちは、トランスコスモス株式会社のある本部の部門人事に所属されていて、課としては研修・労務・キャリアを企画実行している部署です。
2021年度までは大林さんが課長であり、菊田さんはそのうちの、いちメンバーでした。
2022年度より大林さんが部長となり、今度は採用企画と採用実行を担当する2つの課を合わせ、3つの課を管轄するお立場となりました。また、菊田さんが大林さんの後任となり、課長となりました。
2on1はもともとの同僚である大林さんに、私から「こんなサービスを思いついたのだけど、やってみませんか?」というお誘いをしたところ、「ぜひやってみたい」とのことで実現に至りました。
また、菊田さんが新しく課長になられた際も、「これから課員のみなさんと関係性を作って行くにあたり、最初に2on1を入れてみるのはどうでしょう?」というご提案をし、やらせていただきました。
そんな彼女たちの奮闘記です。これをご覧頂いている全てのリーダーの皆様、メンバーの皆様にとって何かしらのお役に立てることを信じて、記させていただきます。
ぜひ、ご一読ください。ご感想も是非、お待ちしております。

インタビュー後編はこちらです。

 

Member

 

●2on1の率直な感想●

大林 率直な感想としては、1対1では得られない気持ちとか、自分が持っている感情とかを冷静に出せたし、相手の気持ちも冷静に聞けたのが良かったのかなと思います。

菊田 近いですね。第三者がいることによってある程度自制心がお互いに働くところがあって、 1対1だと感情論でぐちゃぐちゃにならないという安心感があるんだなっていうのを、両方の立場を踏まえて改めて思いました。

ぬま 両方の立場というのは?

菊田 去年までは課員の1人として大林さんが上司としてやってもらったというのもありますし、その後今期で自分が課長になって初めて課のみなさん1人1人と向き合うという両方の立場を経験して、そこだなって思いました。

大林 そうね・・・。関係性によって2on1はいろいろ違いがあるのかなっていうのはあるかもね。関係性がまあできていない人同士はもちろんお勧めだけど、できててもお勧めだから、まぁお勧めなんだけど。

(一同笑い)

菊田 2on1をする前から、これからの課内の運営をお互いが声をかけあえるような課にしたいっていうテーマがあったんですよね。せっかくいろんな仕事を持っている中で自分の仕事だけになりすぎていてもったいないなという感覚があって。でも聞いていく中でお互いが、もっと課内違う担当同士が交流できたらということをお互いが言っていることも多く、そんなことがわかったので、より確信が持てました。

 

●振り返りの大事さ●

ぬま 事前に大林さんとは十分打ち合わせしていたのはありますが、拝見していて、長年関係性があるからこそのかけひきはあったのかなと感じましたね。

菊田 かけひき、へぇ~・・。

大林 うん・・本当にかけひきだね。自分がどこまで曝け出すか、どこまで相手につっこんでいくのか、そういう押して引いてみたいなのはあったかな。

ぬま 大林さんとは終了後にもかなり丁寧に振り返りを一緒にしましたけど、私はいつも車の助手席に乗らせてもらっている感じで、ドライブした後のあそこの景色はコースはどうだったと話す時間も本当に有意義でした。だいたい印象に残っているところは一緒でしたよね。

大林 振り返りは凄く大切でしたよね。それをもとに次はこうがいいかなっていうのも話せましたし。やる相手との関係性によっても違いはあるでしょうし。あれはあって良かったなって思います。

ぬま それは関係性が長く続いている方が、お互い勘ぐるのかもしれません。「あの時のあの言葉はこういう意図だったのかな」とか。「次はこう言おうかな」とか。

大林 そうですね、上司として自分が思っているよりも部下の方が、上司からの一言って重く残ったりするから、自分もそうだしね。本当に言葉は選びますね。菊田さんはどうだった?

 

●とにかくスタートする前は怖かった●


菊田 やると決めるまでに時間がかかりましたね。とにかくスタートする前は怖くって・・。それは2つあって。1つはある程度自己開示しないといけないと思っていたんですね。まだ中途入社して3年目だし、なんでこいつが課長になったの?、こいつ空っぽじゃんて思われたらどうしようと。もう一つは、相手の自己開示も全部しっかり聴いてあげなきゃいけない、それで相手から「菊田さんもう全部私の気持ちわかってくれましたよね」って依存心を持たれることが怖かったんだってことに、飯沼さんに掘ってもらって後で気がつきました。

大林 それでどうだったの?

菊田 はい、結果やってよかったですね。私は上位に資質の戦略性(※1)があるので、相手に関する情報がない怖さもあったんだなって思いました。1つ例を出すとある人が言ってくれたことが驚きだったんです。
そのベテランの方といつもある定例会に二人で出ているんですけど、主催の方から「他に何か質問はありますか?」という声かけがあったあとに、彼女は黙っているんですね。私はまだ着任してまもなくでよくわからないな、全体に訊けないなと思っていて私も黙っていたんです。でもきっと彼女は私に「ここは菊田さんが話す番ですよね」って思っているんだろうなって感じていたシーンがあったんですね。
このときのことが2on1で出てきてちゃんと聴くと、彼女のその時の考えは、「菊田さんが課長になったのだし、ここは自分が引かなきゃと思っていました。」とか、「私出しゃばりすぎに見えていませんか?」と言われて、まったくそんなこと思ってなかったってことをちゃんと自分が開示できてよかったなーって思いました。
※1 戦略性はストレングスファインダーに登場する34個の資質のうちの1つ。目標や目的に向かって最善の方法を探し出すために、周囲の情報を集めようとする行動特性がある。

 

●思い込みで関係性が壊れることもある●

大林 ね、話さないとわからないよね。何だろうね、みんなわかってくれるだろうと思っちゃうのってね。
菊田 わーはははは!!
ぬま 大林さん、初回の時にものすごく振り返りで言ってましたよね。あれだけ言ってたのに、なんで?って。
大林 人間てそういうものなのか・・・。願望なのかなぁ?わかってもらいたいっていう・・・。何なんだろうね?
ぬま その人との関係性やその時の機嫌なんかはきっと影響していると思うんですよね。私は印象的だったのは、大林さんのある人との回ですね。まったく最初噛み合わなかった!お互いに「は?」とか「ん?」とか最初は繰り返していましたね。笑
大林 ねー。このテレワークという、物理的に離れた場所でのコミュニケーションのとリ方の大変さってそこでとても実感したし、今までは隣同士の席だったから何となく空気感というか「怒ってますよ!」という感じとか、何となくわかったのが、そういう空気感でのやりとりができなくなった。コロナ禍だからこそ、2on1をやっていかないと…思い込みで関係性が壊れたりすることはあるんだろうなーって強く思いましたね。

●上司としての優先度 業務 vs 部下の感情●

大林 とはいえ、もう上司歴はかれこれ長いですけど、緊急事態の時は菊田さんの感情とか誰さんの感情はどうでも良いときがあって。まあドライと言えばドライかもしれないけど、やっぱり仕事でお金を生み出すものだからね。普段はどちらかというと業務が滞りなく進むかということを前提にマネジメントしているけど、2on1はそれが揺さぶられる感じはありますね…。
ぬま そうですよね、お二人に限らず多くの上司さんは「なんでそこまで部下の感情的なことに付き合わなきゃならないかなぁ」とか「ホントに2on1て必要なの?」って思うこともありますよね、きっと。でもちゃんと自分が聴いておけば、マネジメントが楽になるかもしれないという打算的な思いもあるでしょうし。全てを前向きに肯定しきれないで2on1に向き合うこともありますよね。
でもきっと、2on1を体験したことがない人は、部下とのこういった自分の気持ちとの葛藤にちゃんと向き合うという時間が持てないまま、優先順位がつけられずにモヤモヤしてまま「面倒くさいな」と思っても置き去りにしちゃっているんじゃないかと思うのです。

●世の中の1on1は上司自身を大事にしていない●

大林 1on1て、上司が相手をつつみこまなきゃいけないって感じが強いイメージがあるんですよね。2on1だったら、2on1だからこその言葉を選んだりすることが、ある意味良い方に向いたと思っています。私は1on1のコミュニケーションよりも、2on1のほうがストレートにコミュニケーション取れるから好みかな。
ぬま 1on1てなんだよ!って言いたい上司の人は一杯いるかもしれませんね。
大林 1on1やれやれって風潮だけど、2on1をやってみてそれは強く思った。もともとなんで自分は1on1は懐疑的なのかなってこともわかった。
菊田 あそっか、1on1は相手が中心で包み込んであげなきゃってことですかね、2on1だと飯沼さんがいることで私も見てもらっているみたいな気持ちがあるってことですかね?
大林 そうそう。
菊田 あ~~なーるほど~!!!
大林 ある意味平等、公平。
ぬま 私が入ることで初めて公平になりますよね、世の中の1on1は上司でもあり、素晴らしいコーチでもありなさいってことが強調されていると思うから頑張るんだけど、それがなかなか両立できないってことにあんまり向き合ってないかなって思うんですよね。
大林 うん、承認くらいじゃないとコーチっぽいことできないよー。全部を包み込むなんて・・・。
(一同 笑い)
菊田 確かに~!すごいバチンと繋がりました~。
大林 あとはね、もう私の部下はしっかり活躍させている自負があるからこそ、1on1という形では無くて大丈夫、と思ったのもあるかな。
菊田 なるほどね・・・。今のお話を聴いて、2on1の意義がようやく深く腹落ちしました!以前大林さんに「どうして2on1をやることにしたんですか?」って尋ねてみて、そのお答えがまったくピンとこなかったんですけど。当時課長になりたての私が理解できなかったのが仕方ないなって思いました 今日聞いてよーくわかりました。

●1on1、本当はどうなの?●

大林 何か勝手なイメージをしゃべってますけど、1on1って上司が部下を知るための場所なの?本当はどうなの?
ぬま 世の中の1on1はいろいろあって唯一解はないみたいなんですね。エルダーのように見守りながら関わっていくものと、コーチ的にどんどん問いを投げながら気づきを促していくものと、そういうのもいっしょくたで、ごちゃまぜのところといろいろ見てきました。
大林 そんなの一人の人ができないよね、かわいそうじゃん!フォローもしながら指導もして・・・ま、必要なんだろうけどさ、それを一緒にやりなさいとなると大変になるよね。今日はどっちでいこうかなって切り替えられるならいいけど、そんな人なかなかいないよね。
ぬま その時の直前の出来事によって気持ちが変わったりして、ちょっとはけ口みたいに関わっちゃったりもあるでしょうね。ものすごく、大変なことを求めているよね。
菊田 あーーーーなるほどーーー。
大林 うん、なんかやってることで知った気になっちゃうよね。1対1でホンネを出せる人っているのかなぁ?「やってやっているんだから聞いてやっているんだから」って上司のジコマン的になってしまわないかな。よほど、気をつけないとね。
菊田 上司になってみて感じますけど、ホンネはなかなか言うのは勇気が要りますよね。
大林 1on1がいけないってわけじゃないけど、私が2on1に求めたのは、自分も相手もそれぞれ思っていることを素直に言える場を作る、そういう公平性の場が欲しかった。だから、仲介役をやって欲しかったんだって。

●2on1を実施してみて、しんどい!と思ったこと●

菊田 1回、ネガティブな回がありましたね。あの時のあの一言忘れていませんよ!って言われた気持ちで終わったような・・。あの時のぶつかり、痛みがあって、でも2人とも逃げずに今日もちゃんと仕事できているっていう自信にもなっています。2on1を経て日々のちょっとしたぶつかりもありながら過ごしていると、私の相手の受け取り方が変わったんですよね。 「あー今日はご機嫌わるいのねー」とか笑。彼女とのことを解決しようがしまいがお金が産まれるわけでは無いし、仕事がより前に進んでいくためには変えられるなら自分が変わる方が良いって思えました。でもあの回が一番もやっとしましたね。どっかで相手を変えようとしていたなと一番気がついたのは彼女のケースだったと思います。
大林 私の回も、相手のネガティブワードがたくさん飛び出した回があったよね。それをそのままにせずに自分で整理をする時間を設けないともう話したくないという感情になるんじゃ無いかな。私は言語化して整理してこんなこと言われたなって、ワードにしてその時どんな風に思った?ってことを自分で内省した。こういうふうに言われたことがショック、本当はこう思っていたのにって、感情を整理した。これをしていなかったら、「ああいうふうに言われたな」で終わっていただけだと思う。
ようやく今、消化できたけど、時間が経って相手もどう変わったのかも知りたいなって思いますね。そういう部下との対面を経て、シャッター閉めるのもありだと思うし 自分がどうしていきたいかを決めるのが本当に、大切かと思いましたね。
ぬま 覚えています。部下側が途中から自分も予期せずに感情的になってきた回でしたね。大林さんのことも大事に関わりたかったんだけど、自分の我慢してきたものが大林さんに吹き出した感じでしたね。
大林 言っちゃった人の方がしこりとして残っているかもね。本人もどう解消したのかな、今なら聞いてあげたいなって思います。きっと相手も言い過ぎたと思ったと思う。だって、自分の消化は数ヶ月がかかったもん。ここ暫くで、ようやく消化された感じ。
菊田 でもそれも2on1じゃないと難しかったでしょうね。
大林 うん、無理無理。2on1だからこそ相手は私に言えたんだと思うよね。

2on1の制度で取り入れた方が良さそうなこと●

大林 必要ですね!で、すぐというよりは、暫く時間を置いてから消化できたのか確認してもらった方が良いですね。もしその時点で消化していなかったら何か消化するための寄りそいが必要だと思う。私は書き出したときに初めて、「受け止め切れていない」ってことに気がついたから。
ぬま 上司部下、双方に必要そうですね。 あの回は本当に、お二人とも取り繕うことをせずに向き合っていった様子が、お二人はあの場が本気で真剣だったんだってことがひしひしと伝わりました。あの場に同席させて頂いて本当に感謝です。
菊田 え、それすごいっすね!
大林 まあ、消化しても思い出して「きぃ~!」ってなるけど、結局は自分が部下にそう言われて悲しかったんだよね。
菊田 そうですよね、言った側はもっと思い出すのがしんどいかもしれないですよね。
大林 自分が傷つけたと自覚したら、その後遠慮し始めちゃうよね。だからこそ、時間を置いてからもう一回やってみての、どんな感じにこうだったねこう変化したね、関係性が一段階変わるのかなって思っている。
強めなワードが出た時は、少し時間を空けて心の整理のための時間、を取ってあげたほうがいいと思う。そうじゃないともう、やりたくなくなっちゃうからね。
ぬま そうですよね、心配ではあったけど、私から何かまた思い起こさせても大丈夫かな?っていう遠慮があって、部下さんの方には積極的に声をかけませんでした。大林さんとは振り返りをしていたからそこまで大丈夫かなと思っていたけど、部下の方が、心配ではあったんですよね。だから、正直迷いました。

●フォローも平等にするべき●

菊田 どうなんだろう、でもその場では第三者として入っていて、平等に両方見ますよ、と言っているからやっぱり部下側にも対等なフォローが必要なんじゃないかと思いますよ。そこはプロとしてやっているのであれば、片方に声をかけたのであれば、もう一方にもフォローはしたほうが良いのかなと思います。
ぬま そうか。
菊田 そうそう、大林さんのスケジュールがいつも、2on1が終わった後に30分ブランクのスケジュールが入っているの、多分みんな見てたんじゃないでしょうか。これがあると、「私のこときっと何かあの2人の中で話されているんだわ」って思う人は思いますよね。
これだと、上司とばっかりとつるんでいるように見えます。だから、平等と言っている以上は、例えば最初に30分上司、30分後に部下さんは戻ってきてくださいとかの方が良いと思います。
ぬま おー…そうか、なるほど!そんな風に見えていたんですね。ありがとうございます。ぜひ次回はやり方相談させてください。
大林 うん、やっぱり私も経験したように、どんなことを体験したかという言語化が大事なんでしょうね。そうじゃないとあまり良く思えない体験が残ると、次回は二の足を踏んじゃうと思うからね。

 

ー前編はここまでです。後編「一度わからないと思うから、一回ダマされたと思ってやってみて!」に続きます。


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